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皆さん、こんにちは。
前回の物語の答えは「手袋を買いに」でした。
では、日本語訳をどうぞ。
『寒い冬がきつねの親子が住んでいる森にもやってきました。
ある朝、子狐が外に出ると、「わっ」と叫びました。両手を目の上にやり、母さん狐のところにもどると、「お母さん、目に何か刺さったよ、早くとって!」
母さん狐は少し慌てました。恐る恐る子狐の手を取って見てみましたが、目には何も刺さっていません。母さん狐は外に出て気が付きました。外には厚い厚い雪が降っていたのです。子狐は雪を見たことがないので、白い雪が太陽に照らされて、あまりにもまぶしかったので、目に何か刺さったのだと思ったのです。
子狐は外に飛び出して遊びました。厚く積もった雪の上で転がったり、飛び回ったり・・・しばらくすると母さん狐のところに戻り、「お母さん、手が冷たいよ。ひりひりするよ。」
冷たく紫になった手をお母さんの前に出すと、母さん狐は子狐の手にはーはーと息をかけてやりながら、自分の手で温めて、優しく子狐の手を握ると、「すぐに暖かくなるからね。」と言いました。
母さん狐は心の中で、「かわいい坊やの手がしもやけにでもなったら可哀想だわ。夜になったら、町に行って手袋を買ってあげましょう。」と思いました。
夜になると、狐の親子は穴から出てきました。子狐はお母さんのおなかの下にもぐり、歩きながら、面白そうにきょろきょろと見渡しました。
すぐに、前の方に明るい光が見えてきました。それを見て子狐は、「お母さん、星があそこに落ちたの?」と言いました。お母さんは「あれは星ではないのよ。」というと、思わずその場に立ち止まりました。
町の明かりを見ると、母さん狐はある日友達と町へ行ったときの悲惨な出来事を思い出しました。
そのとき、母さん狐は物を盗むのはよしなさい、と注意したにも関わらず、友達の狐はそれを聞かずに人の家であひるを盗もうとして、人に見つかってしまい、必死で逃げてきたのです。
子狐はお母さんのおなかの下から不思議そうに見つめると、「お母さん、どうしたの?早く行こうよ。」と言いました。
しかし、お母さんはどうしても前に進む勇気がありません。しばらく考えて、子狐を一匹で町に行かせることにしました。
「坊や、手をお出し。」
母さん狐が子狐の手を握ると、その手はかわいらしい人間の子供の手になりました。
子狐はその手を開いたり握ったり、つねったり、嗅いだりしました。
「なんか変だよ、お母さん、これ何?」子狐は言いながら、じっくりとその手を眺めました。
お母さんは「いいかい、坊や。これは人間の子供の手だよ。町に行ったら人の家がたくさんあるからね。まずは帽子屋を見つけるのよ。そしてトントンとドアを叩いて‘こんばんは’と言いなさい。そうするとね、人が中からドアを少しだけ開けるからね、その隙間にこの手、そう、この人間の手を入れて‘ぼくにぴったりの手袋をください’と言うのよ、わかった?だけどこっちの手は絶対に入れてはだめよ。」母さん狐は辛抱強く言い聞かせました。
「どうしてこんなことするの?」子狐が聞くと、
「人はね、あなたが狐だとわかると、手袋を売ってくれないばかりか、あなたを捕まえてしまうのよ。人って、本当に恐ろしいものなのよ。」
「へぇ。」
「絶対にその手を入れてはだめよ。」
子狐は雪の光が映る野原を、ゆっくりと町の灯りの方へ歩いていきます。
はじめは一つしかなかった灯りも、次から次へと二つ、三つと増えていき、ついには十いくつもにもなりました。
子狐はようやく帽子屋を見つけ、お母さんから教わった通り、トントンとドアを叩くと「こんばんは」と言いました。
お母さんの言った通り、中から人がドアを一寸ほど開けました。一筋の光がドアの隙間から現れ、道の白い雪に長く映りました。
子狐は目を灯りで照らされると、とたんに焦りはじめ、出してはいけない方の手を隙間に入れると「ぼくにぴったりの手袋をください。」と言いました。
帽子屋はこの手を見ると、思わず「わっ」と叫びました。そして、「これは狐の手だ。狐が手袋を買うなんて、きっと、葉っぱを持って買いに来たにちがいない。」と思い、「先にお金をください。」と言いました。
子狐は二枚のお金を握り、帽子屋にしっかりと渡しました。彼は指でそれを弾くと、二枚のお金を互いにぶつけてみました。すると、チン、チンとよい音がするではありませんか。
彼はこれは葉っぱではなく、本物のお金だ、と思うと、すぐに戸棚から子供用の毛糸の手袋を取り出し、子狐の手の中に置きました。子狐は「ありがとう。」と言って、店を離れました。
来た道を歩きながら、お母さんは人は恐ろしいものだと言ってたけど、今日は全然怖くなかったな、と思いました。
ちょうどある家の窓の下を通りかかったとき、突然人の声が聞こえてきました。なんて美しくて、優しい声だろう。
“ねむれ ねむれ 母の胸に
ねむれ ねむれ 母の手に”
子狐は、これはきっと、人間のお母さんの声だ、と思いました。だって、寝るときにはいつも、狐のお母さんもこんなに優しい声で、揺すってくれるのですから。
つづいて、子供の声が聞こえてきました。「お母さん、こんなに寒い夜、森にいる子狐は寒くないのかな?」
するとお母さんが「森の子狐はね、母さん狐の歌を聞いて、穴の中で寝るところだわ。よい子は早く寝なさい。坊やと狐、どっちが早く寝るかしら。」と言いました。
子狐はここまで聞くと、突然お母さんのことを思い出し、お母さんが待つ場所へと駆けていきました。
』